2020.12.17 16:12 政治 | 国内・地方

大黒市長選挙で行われていた「代行投票」は不正なのか

大黒市役所

他者の身体を借りて別の場所にいくことができる、Uber Existenceといった存在代行サービスは、このコロナ禍の中で広がりを見せている。投票所でも感染症対策は行われているが、どうしてもある程度の密集は避けられない。そんな中で、この存在代行サービスを使って投票を行う「代行投票」をする人が現れ始めている。
だが、ここで問題となるのは、投票IDである。投票の過程では、身分証明書、または、送付される入場券が必要である。投票する存在代行ユーザーが自身の入場券を代行者宛に送付・手渡しするケースや、さらに問題なのは、代行者自身の身分証を用いて投票するケースである。手軽に行える後者のケースが圧倒的に多い。この代行投票の問題は、他人名義で投票できてしまうことであり、民主主義の根幹にも関わる問題だ。しかし、この代行投票を請け負う存在代行者たちは、いずれもそのことを了承しているという。
今月7日に行われた大黒市長選挙で代行投票を代行者として行なったKNさん(19)=仮名はこう語る。
「代行投票は自分のIDを使ってやるので1度しかできませんが、その分通常の存在代行よりも多く稼げるので選挙のたびにこれは行いますね。僕は、今回の選挙で投票の意思はありませんでしたので、問題はないと思っています。」
確かに、代行者に投票する意思が無く、代行依頼者が自らのIDを破棄すれば問題はないのかもしれない。しかし、実際にこの選挙では、このKNさんに代行を依頼したとされる人物によって、複数の代行者が投票を行なったという情報も寄せられている。代行者が了承してしまえば、代行投票によって自分の当選させたい候補に何票もの票を投じることができてしまうのである。
そのことについて、大黒市長選挙管理委員会に問い合わせた。
「投票所に訪れた人がご自分のIDによって票を投じること自体に問題はありませんし、当委員会には、そのような事実関係は報告されておりませんので、無闇に規制することも難しいという現状があります。ご意見は参考にさせていただきます。」ということだ。

当選した現職・原川善二氏

事実、今年の大黒市長選挙の投票率は前回比で10%も上昇し、若者の投票率が特に上昇した。このような投票率増加を背景に、大黒市も、存在代行サービスが用いられることについては黙認せざるを得ないという事情がありそうだ。今回当選したのは現職の原川善二氏(66)。中年〜高齢者層に人気のある候補で、今回は若者票も取り込んだ形で2位に差をつけた。この増加した若者票が存在代行サービスによる影響だと考えずにはいられない結果となった。